
成熟フェーズにある国内ゲームアプリ市場では、新規ユーザー獲得の難易度が年々高まっています。そうした中、新たな成長機会として注目を集めているのが、海外市場への展開です。
グリーエックス株式会社では、国内で培った広告運用の知見を活かし、人気IPタイトルの海外配信においてTikTokを活用した広告施策を実施しました。その結果、日本で成果を上げてきた運用設計やクリエイティブの考え方が海外でも活用できる可能性を示すことができました。
今回は、グリーエックス株式会社の新里氏、深田氏、丸山氏と、TikTok for Business Japanの辻上、樫山が、海外配信に挑戦した背景から、施策の工夫や成果、そして他のIPタイトルにも応用可能な勝ちパターンについて語ります。
🔴TikTok for Business 辻上(以下、辻上):グリーエックス株式会社の事業内容と御社の強みについて教えてください。
🟢グリーエックス株式会社 新里氏(以下、新里):弊社は、グリーグループのインターネット事業で培った知見を強みに、クライアント企業のDX・AXを支援しています。戦略策定から開発、運用、マーケティング、カスタマーサクセスまでを一気通貫で支援するDXコンサルティング事業を展開しています。私たちが担当するマーケティング領域では、グリーグループのゲーム事業で培った知見を活かし、アプリ事業者のユーザー獲得やマーケティング支援を強みとしています。
新里 陸久 氏
グリーエックス株式会社DXコンサルティング本部 プロダクトサクセス部 マーケティングチーム
ゲームアプリを中心に、マーケティング領域におけるUA(ユーザー獲得)広告の戦略立案・進行管理を担当し、クライアントと社内外の関係者をつなぐフロント業務を担う。以前まで従事していた広告運用担当としての経験を活かし、運用知見に基づいた提案を行っている。
🔴辻上:近年、日本のゲームアプリ市場では、CPI高騰や既存需要の奪い合いなどにより、新規ユーザー獲得の難易度が高まっているとお聞きしました。どのような課題感がありましたか。
🟡グリーエックス株式会社 深田氏(以下、深田):日本のモバイルゲーム市場では、年間ダウンロード数が2020年以降減少傾向にあり、ゲーム人口も約5,475万人で横ばいの状態が続いています。市場全体が成熟フェーズに入っているため、新規ユーザーの獲得は年々難しくなっています。
実際に日々の広告運用においても、新規ユーザーを継続的に獲得することは非常に難しく、CPIも徐々に高騰していく傾向にあります。この流れは避けられない状況だと感じています。
🔴辻上:そうした中で、海外市場への注目はどのように高まっているのでしょうか。特にゲーム業界では、日本IPの海外人気もあり、海外配信との相性の良さがあると思います。その点についてどのように感じていますか。
🟡深田: 世界のゲーム市場は約2,000億ドル規模にのぼり、そのうち日本発IPの関与率は推定30%を超えるというデータもあります。
国内市場が成熟する中で、収益成長の新たな柱として海外市場へ進出する、いわゆる「アウトバウンド戦略」に注目するパブリッシャーが増えていると感じています。
🔴辻上: TikTok for Businessとしても、新たなユーザー層を求めて海外展開へと舵を切る広告主様が増えていることを日々感じています。
特に日本のゲームIPは、世界的に見ても非常に強力な武器となっています。TikTokは検索主体ではなく、ユーザーの興味関心に基づいたレコメンドを強みとする「発見型」のプラットフォームです。そのため、従来の獲得チャネルではリーチが難しかった「まだそのIPやゲームを知らない非顕在層」に対しても、動画を通じて直感的に魅力を届け、新しいファンを創出できる点で、日本IPの海外配信と非常に相性が良いと捉えています。
深田 季穂 氏
グリーエックス株式会社
DXコンサルティング本部 プロダクトサクセス部 メディアマネジメント
ゲームアプリをはじめ、マッチングアプリなど幅広いアプリ領域において、UA(ユーザー獲得)広告の運用設計・最適化を担当。TikTokをはじめとするプラットフォームやアドネットワークを活用し、以前まで従事していた営業担当としての経験も活かし、クライアントのKPI達成に向けた広告運用を支援している。
🔴辻上:海外配信によるユーザー獲得において、TikTokにはどのような可能性を感じていましたか。
🟡深田: TikTokは動画による表現のため、言語の壁を越えて訴求できる点に可能性を感じており、なかでもUGC風クリエイティブは、広告らしさを抑えながら自然にユーザーの興味・関心を引き付けられる表現として注目していました。また、ユーザーの興味関心に基づくレコメンドシステムも優秀で、海外配信においても新規ユーザーの獲得につながるプラットフォームだと考えおります。
🔵TikTok for Business 樫山(以下、樫山):TikTokでは、実際のプレイ画面やユーザーのリアクション、思わず試してみたくなるような演出をクリエイティブに取り入れることが、ユーザー獲得効率に大きく影響するケースが見られます。UGC風クリエイティブは、そうしたゲーム体験をユーザー目線で自然に伝えられるため、海外配信においても非常に有効です。
また、TikTokは、ユーザーの興味関心や視聴行動に応じてコンテンツが届けられるため、既存のゲームユーザーだけでなく、まだゲームを知らない潜在層にもリーチできます。この点が、海外市場においても新規ユーザー獲得に対してTikTokが発揮できる最大の優位性だと考えています。
🔴辻上:海外配信においては、まだ事例が少ない中、特に今回は、運用面とクリエイティブ面の双方でのチャレンジがあったと伺っています。どのような難しさがありましたか。
🟡深田: 運用面では、MAI(アプリインストール最適化)に加え、課金やゲーム内のより深いイベントへ最適化するAEO(アプリイベント最適化)やtROAS(目標ROASに基づくバリュー最適化)など、複数のキャンペーンタイプを組み合わせることで、ROASを維持しながらCPIの改善とCV数の確保を両立できるよう、最適な配信設計を試行錯誤しました。
一方、クリエイティブ面では、海外ユーザーに向けて言語に依存せず、ゲームの世界観やシステムを直感的に伝えられるTikTokらしい表現が最適だと判断しました。海外での事例はまだ少ない状況でしたが、日本で成果が出ていたUGC風クリエイティブは、IPタイトルであっても海外ユーザーに高い訴求力を持つのではないかという仮説を立て、検証に取り組みました。
🔴辻上:ゲームアプリのIPタイトルでは、クリエイティブ制作にはさまざまな制約があったと思います。その中で、どのような工夫をされたのでしょうか。
🟣グリーエックス株式会社 丸山氏(以下、丸山):ご認識の通り、IP案件ではクリエイティブ制作におけるレギュレーションが細かく定められているため、UGC風クリエイティブに挑戦するハードルは高いものでした。特にIPと実写の組み合わせについては、世界観を損なう可能性があるという観点から、監修のハードルも高い状況でした。
そこで今回は、IPの世界観を毀損しないよう、ゲーム画面を表示したスマートフォンを持つ手元だけを実写で見せる、シンプルなフォーマットを作成しました。動画全体をUGC風にするのではなく、冒頭カットのみを実写化し、ユーザーの興味を引く“つかみ”としてUGC風の演出を取り入れています。一方で、本編ではアプリの魅力をしっかり伝えられる構成にしました。
※UGC風クリエイティブのイメージ(実際の広告クリエイティブとは異なります)
丸山 結衣 氏
グリーエックス株式会社DXコンサルティング本部クリエイティブ部デザインスプリントチーム
ゲームアプリやWebサービスを中心に、クリエイティブの企画・制作を担当。ゲームアプリやポイ活アプリなど幅広い案件に携わるほか、近年は体験設計を強みとしたブランディング施策やクリエイティブ戦略にも参画し、ユーザー視点を活かしたクリエイティブ制作を支援している。
🔴辻上:ゲームアプリでは王道と言われるインセンティブ訴求型と比較して、今回のUGC風クリエイティブはどのような成果につながりましたか。また、どのような点がユーザーに響いたと感じていますか。
🟡深田:同時に配信したガチャ訴求クリエイティブと比較して、CPIは49%、登録CPAは50%、課金CPAは49%と、すべての指標でパフォーマンスが改善しました。この結果から、IPタイトルの海外配信においても、UGC風クリエイティブが高い効果を発揮することが分かりました。
また、動画全体を実写化するのではなく、冒頭のみを実写にした構成でも、ユーザーの興味・関心を十分に引き付けられることが分かりました。UGC風クリエイティブが“つかみ”としての役割を果たした上で、IPの世界観を損なうことなくアプリの魅力を伝えられたことが、成果につながった要因の一つだと考えています。
🟣丸山:今回の成果を通じて、IPタイトルであっても、世界観を守りながらTikTokらしいクリエイティブを設計できることを実感しました。今後も、この考え方をベースにタイトルごとの特性に合わせた表現を検証し、他のIPタイトルの海外展開にも応用していきたいと思います。
🔴辻上:運用面では、MAI配信、AEO配信、tROAS配信を組み合わせて、フルファネルで設計したとのことですが、どのような成果につながりましたか。
🟡深田:基本的には、日本で成果を上げてきた配信設計を海外向けに応用し、単発のインストール獲得ではなく、LTV(顧客生涯価値)を重視した設計を行いました。MAI配信に加え、AEO配信やtROAS配信を組み合わせることで、ユーザー獲得から課金までを見据えた運用を実施しています。
特に、iOSではAEO配信、AndroidではtROAS配信を主軸とすることで、ROASの観点においても他プラットフォームと比較して効率的な成果につながりました。また、タイトルの特性に合わせたターゲットへのMAI配信も、長期間にわたって安定したユーザー獲得に寄与しています。
海外市場は日本市場よりもユーザー母数が大きいため、ターゲティング配信が長期間機能しやすく、初動でターゲットを絞り込み、その後ブロードへ展開していく段階的な運用が効果的だと感じています。
🔵樫山:今回の検証から見えてきたのは、IPタイトルにおいて「LTVを重視した段階的な配信設計」と、「世界観を守りながら、冒頭に実写によるUGC風の要素を取り入れたクリエイティブ」を組み合わせることです。
海外市場では、国や地域によって反応する訴求が異なるため、こうした運用設計とクリエイティブを両輪で検証・最適化していくことが、成果につながる重要なポイントだと考えています。
🟢新里:今回、実際に海外配信へ取り組んだことで、TikTok広告の海外展開における可能性を改めて強く感じました。まず、動画フォーマットによる言語の壁を超えた訴求力は、海外配信において非常に大きな強みです。テキストに依存せず、ゲームの世界観や魅力を直感的に伝えられるため、多言語対応のコストを抑えながらも幅広い国・地域のユーザーへリーチできます。
また、TikTokのレコメンドシステムは精度が高く、日本IPに親和性のあるユーザーを潜在層も含めて掘り起こせる点にも大きな可能性を感じています。
世界市場には、まだリーチできていない潜在的なファン層が数多く存在しています。日本市場がユーザー数・広告効率ともに頭打ちとなる中で、TikTokを活用した海外配信で獲得したユーザーが、ゲームの収益成長の新たな柱になり得ると考えています。
🔴辻上: 私たちも、TikTokは「言語よりも感覚や体験で伝わる」クリエイティブ主導のプラットフォームであり、それが海外進出のハードルを大きく下げると考えています。
加えて、単発のダウンロード獲得にとどまらず、インストール後のLTVの最大化まで見据えたフルファネルでの配信が可能な点も大きな強みです。今回のように、MAIに加えてAEOやtROASを組み合わせることで、広大な海外市場の中から優良ユーザーを効率よく獲得し、ビジネスの成長につなげることができます。
海外市場におけるTikTok広告は、アプリ領域ではまだ大きな可能性を秘めています。競争が本格化する前に、TikTokならではの運用手法やクリエイティブの知見を蓄積していくことが、グローバル市場で先行優位性を築く鍵になると考えています。
辻上 芽以
TikTok for Business Japan, Global Business Solutions, Agency Team, Digital Agency Group
デジタル専業代理店のAgency Partnerを担当し、特にアプリ・ゲーム領域を中心とした代理店様を多く担当。2024年末よりグリーエックス株式会社を担当し、パートナーとして代理店との連携を通じたソリューション提案、ビジネス拡大に取り組んでいる。
🔴辻上:今後、海外配信に挑戦したい日本企業に対して、どのようなことを伝えたいですか?
🟢新里: まずお伝えしたいのは、「日本での勝ちパターンは海外でも通用する」ということです。
今回、日本で培ったLTV重視の運用設計やUGC風クリエイティブの考え方をベースにしたことで、海外でも一定の成果を上げることができました。ゼロから作り直す必要はなく、まずは国内で得た知見を応用するところから始めることをおすすめします。
一方で、クリエイティブのローカライズには丁寧に向き合う必要があります。IP案件ではレギュレーションが厳しいことも多く、海外特有のUGC表現を使用しながらレギュレーションをクリアするのが難しいことがあります。今回のように「冒頭のみ実写化」といった工夫で突破口を見つけるなど、制約の中で最適なクリエイティブを設計することが重要です。
また、海外市場は日本よりもユーザー母数が大きいため、焦らず段階的にスケールさせていく姿勢も大切です。初動でターゲットを絞り、データを積み上げながらブロードへ展開していくアプローチが、効率良く成果につながる近道だと感じています。
🔵樫山:私たちとしても、海外配信を検討している広告主様や代理店様には、まず国内で培った知見を起点に挑戦していただきたいと考えています。
今回の取り組みを通じて、日本で培った運用設計やクリエイティブの考え方が、海外でも活用できる可能性が見えてきました。さらに、それらをベースにしながら、タイトルごとの特性や各市場の反応に合わせて最適化していくアプローチは、一つの横展開の型として整理できたと考えています。
TikTok for Businessとしても、運用設計とクリエイティブの両面から検証を重ね、日本企業の海外展開を引き続き支援していきたいと考えています。
樫山 拓人
TikTok for Business Japan, Global Business Solutions, Performance CST-Apps and Gaming
アプリ・ゲーム領域における広告運用を担当し、キャンペーンのパフォーマンス改善を支援。クライアントや代理店と連携しながら、広告運用の最適化や成果向上に向けたコンサルティングを行っている。