エンタープライズのマーケティング戦略 第1回 サントリーホールディングス ※このインタビューは日経ビジネスにて2025年11月7日に広告掲載したものです。

国内における2024年のTikTok経由の推定消費額は前年比37%増の2375億円、国内名目GDP貢献額は4855億円と推計される*。経済活動に大きな影響力を持つTikTokを業界でいち早く導入したのがサントリーホールディングスだ。
日本のトップ企業はどのような戦略のもとに生活者コミュニケーションを行っているのかを検証するシリーズ企画の第1回では、同社宣伝部の野口光太氏にその狙いと効果について話を聞いた。
(聞き手:勝俣哲生=日経BPクロストレンド発行人)
*「TikTok Socio-Economic Impact Report〜日本における経済的・社会的影響〜」(2025年6月発行)
⚫️時代の移り変わりのなかで経営戦略やビジネスモデル構造はどのように変化してきましたか。
🔵野口:サントリーは市場の変化を「ブランド価値を高めるチャンス」と捉え、経営戦略とビジネスモデルを転換させてきました。成熟する国内市場と生活者の多様なニーズに対応するため、海外M&Aを積極的に行い、グローバル市場での収益基盤を確立しました。単なる事業拡大ではなく、各地域の文化や嗜好に寄り添い、グローバルで通用するブランドストーリーを創造する挑戦です。
生活者の皆様とのコミュニケーションでも進化を続けています。テレビを中心としたマス広告に加え、昨今はデジタル技術を最大限に活用し、生活者一人ひとりの心に響くパーソナライズされたコミュニケーションを強化しています。
変わらないのは「やってみなはれ」精神です。とにかくチャレンジしていこうという考え方が、今も変わらずに根付いています。また、常に「生活者起点」で物事を考える姿勢も根幹にあります。企業目線で物事を考えるのではなく、生活者をしっかりと見たうえで、チャンスはどこにあるのかを考えています。
サントリーホールディングス 宣伝部 課長 野口光太氏
⚫️デジタルのコミュニケーションでは双方向になるメリットがあります。これは、御社の経営戦略に影響を及ぼしていますか。
🔵野口:生活者理解の意味で大きいと感じます。近年のデジタル化と生活者の多様化に伴い、弊社のビジネスモデルは、「マスとデジタルを連携させ、ブランドの文化を創造し、生活者との関係を深める」という、より柔軟で多層的な構造へと進化しています。
現在はデジタルプラットフォーム、特に縦型動画を活用した「双方向コミュニケーション」も意識した活動の組み立てをしています。これは、商品開発からプロモーションまで一貫して「生活者の方々との対話を通じて、共にブランドを育んでいく」という、より深いエンゲージメントを追求するアプローチです。TikTokのような比較的新しいプラットフォームを積極的に取り入れることは、「生活者起点」のアプローチを加速させ、市場の変化に迅速に対応する柔軟なビジネスモデルの構築に不可欠な要素となっています。データで可視化・分析ができるため、PDCAを回しやすい点もデジタルマーケティングの強みだと思います。
⚫️TikTokを初めて活用した2019年は「TikTok売れ」という言葉もない時期。当時の大企業としてはチャレンジングな試みだったのではないかと思います。
🔵野口:当初は、社内に慎重な意見もありました。「生活者が何を求めているか」「何が彼らの心に刺さるか」を徹底的に深掘りしてTikTokの必要性を説いた担当者の熱意と、それを後押しする風土が実現につながったと思います。また、データや事例を通じて、TikTokが商品のターゲット層との接点強化ができることを示し、有効なプラットフォームであるとの支持を得るに至りました。実際に活用してみると、ユーザーの参加意欲の高さと拡散力に驚かされ、ブランドの新しい魅力を発信するきっかけとなりました。以来、TikTokの取り組みは年々拡大しており、サントリーのTikTok活用ブランド数は現在40以上に達し、直近4年間で約430%増加するなど、非常に重要な存在となっています。
⚫️マーケティング戦略における、TikTokの位置付けを教えてください。
🔵野口:幅広い層への認知拡大、ブランドの世界観を伝える「王道」の訴求のほか、生活者が「見て、試して、投稿する」というアクションを起こしやすいTikTokの特性を活かした、ユーザーを巻き込んだ「共創型」のコミュニケーションに利用しています。面白いコンテンツを作りやすく、新しい飲み方やレシピを提案したり、生活者が自らブランドの魅力を発信してくれたり。私たちと生活者が「共にブランドを育んでいく」ことができるプラットフォームだと捉えています。
⚫️代表的な活用事例を教えてください。
🔵野口:仕事終わりにハイボール缶を楽しむ「しごおわハイ」をショートドラマで提案した「限界ちゃんの#ていねいな暮らし」や「クラフトボスTEAシリーズ」の発売記念プロモーション、最近では他のプラットフォームと同時展開した「サントリー生ビール」のキャンペーンも話題を呼びました。
⚫️今後どのようにTikTokを活用していきたいと思いますか?
🔵野口:TikTokは、ユーザー数の拡大が著しく、若年層だけでなく幅広い層に影響力を持つ重要なプラットフォーム。また若いユーザー層は未来のコアターゲットです。今後もTikTokと協働して、新しいマーケティング手法の創出に挑戦し、ブランドの魅力をさらに広く、深く広げていきたいと思います。
⚫️最後に、TikTokの活用に一歩踏み出せずにいる経営者や担当者の方たちに対してアドバイスをお願いします。
🔵野口:TikTokは生活者との新しい「対話の接点」を生み出し、ビジネスに革新をもたらす「未来への投資」となるはずです。まず小さい単位で挑戦し、成果を確認してから広げていくのが社内の理解を得やすいと思います。また、若い世代に企画や運用を任せることも人材育成の観点から大事だと思います。
いち早くTikTokの活用を進めてきたサントリー。これは、生活者起点のマーケティング姿勢が組織文化のレベルで浸透しているからこそだと感じます。 ともすれば企業のマーケティング活動は企業目線の一方的なコミュニケーションに陥りがちですが、サントリーは常に顧客を中心に考え、顧客が何を求め、どんなアプローチが喜ばれるのかを深く探求しています。この顧客に寄り添う姿勢と、ショート動画で共感性の高いコンテンツを届けやすいTikTokの特性がマッチしたことが、数々のキャンペーンで成果を上げた要因でしょう。 経営目線では、売れ行きにどこまで寄与しているのか、ROI(投資対効果)の観点も気になるところです。その点、TikTokでは店頭購買データなどとの接続でプロモーション施策のROIを可視化する試みも始まっているとのこと。共感度の高いコンテンツで思わず購入につながるTikTokの「売る力」が見える化されることは、企業のマーケティング戦略に大きな影響を及ぼしそうです。
日経クロストレンド発行人 勝俣哲生