2025年6月30日に日本市場にローンチされたTikTok Shopは、“ディスカバリー Eコマース”という新たな購買体験を生み出し、国内の広告主や広告代理店の注目を集めています。
今回は、創業時からTikTokに力を入れ、TikTok Shopの日本ローンチ時には「TSP(TikTok Shop Partner)」、「TAP(TikTok Affiliate Partner)」、「CAP(Creator Agency Partner)」のすべての認定を取得するなど、TikTok Shopの活用を多角的に支援できる体制を築いているstudio15株式会社 代表取締役 岩佐氏にインタビュー。
TikTok Shopがゲームチェンジャーとなる可能性を見据えた戦略やマーケット成長への貢献について、TikTok for Business Japan 髙倉と語り合っていただきました。
🔵TikTok for Business 髙倉(以下、髙倉):studio15さんは、創業以来TikTokをメインとした代理店事業を展開されていますが、特にどのような点を強みや独自性と捉えていらっしゃいますか。
🔴studio15株式会社 岩佐氏(以下、岩佐):まだ企業のTikTok活用が少なかった段階からTikTokに注力し、積み上げてきたアセット、ナレッジ、実績が私たちの強みです。黎明期からTikTokと向き合い続けてきたことで、TikTokのプラットフォームとしての変遷やクリエイターおよびクリエイティブの変遷等を踏まえたうえで、TikTok Shopの活用も含めたこれからのTikTokを見据えてのサポートが可能です。
代理店事業に加え、TikTokクリエイターのマネジメントや成長支援を行うMCN事業、動画制作を担うクリエイティブ事業も自社で展開しており、これら3つの機能をワンストップで提供できる点が業界内での独自のポジションにつながっているとともに、事業間のシナジーが生まれ新たな事業の立ち上げにつながっています。
MCN事業では、約1,000人のクリエイターとのネットワークを有し、これまでクリエイターと数多くのコンテンツを生み出してきました。
クリエイティブ事業では、70社近くの企業様のTikTokアカウントの運用代行を自社で企画、撮影、編集等一気通貫で担当してきており、幅広い業種の企業様のアカウントを運用してきております。
また、足下で事業として成長しているショートドラマ事業は、MCN事業やクリエイティブ事業といった既存事業間のシナジーにより生まれた新たな事業の一つです。ショートドラマTikTokアカウント「ドラマみたいだ」では、数々のショートドラマによるプロモーションを行っております。一例として、ショートドラマ×クリエイタータイアップ施策をUQコミュニケーションズ様のUQ WiMAXにて行い、想定を大きく上回るブランド認知3.6%拡大につながりました。
参考記事:https://ads.tiktok.com/business/ja/blog/uq-wimax-casestudy
加えて、代理店事業で培ったプラットフォーム理解とクリエイティブ事業で積み上げた制作力を融合したTikTokクリエイタースクール事業「ゼロディレ」の運営を開始しております。
上記の通り、代理店事業、MCN事業、クリエイティブ事業を三位一体でやっていることによる提供サービスの幅の広さ、事業ケイパビリティの拡張性が弊社の強みです。
岩佐 琢磨 氏 / studio15株式会社 代表取締役
金融機関での勤務を経て、東証プライム上場企業の株式会社セレスにてアフィリエイトビジネスをはじめ、広告領域全般やクリエイターエコノミー、SNS、D2C領域の事業に携わる。2020年にstudio15に参画し、2021年に代表取締役に就任。ナショナルクライアントを中心に300社以上の企業案件を手がけ、TikTokの活用提案を行いながら、経営の立場から事業戦略を策定。現在はTikTok Shopの活用に関わる事業展開を推進している。
TikTok Media Buying Professional。
🔵髙倉:これまで積極的に当社の広告プロダクト・ソリューションの活用に取り組まれていますが、それによる成功事例について、課題・取組内容・成果まで具体的に教えてください。
🔴岩佐:TikTokでは日々、新しい機能や広告プロダクトが追加・アップデートされており、弊社では、代理店事業、MCN事業、クリエイティブ事業の各アセットを活用して、新しい機能・プロダクトをいち早く研究し、積極的に成果につなげています。Destination Links(商品リンク)の活用では、MCN事業を活かし、クリエイターと連携した複数の施策を展開しました。レック様のバルサンの事例では、ROAS400%超という高い成果を上げております。Destination Links(商品リンク)は、TikTokのオーガニック動画に直接リンクを設置できる機能であり、従来難しかったトラフィックの誘導を容易にし、いわゆる“TikTok売れ”を再現性高く実現しやすいと感じています。
また、弊社ではTikTokメディアバイイング認定資格の取得も積極的に進めており、10名以上が取得済みです。TikTokのマーケティングソリューションに関する知識の向上・最新動向のキャッチアップを意識しています。
🔵髙倉:studio15さんは、TikTokを重要なプラットフォームとして積極的に活用してくださっており、私たちが発信するプロダクトのアップデートやトレンドをいち早く吸収し、クライアントのためになるものはすぐに実践していただいていますよね。
今お話しいただいたDestination Links(商品リンク)の活用や、ストーリーセレクションとショートドラマ形式との相性を見極めて取り組んでいただいた点も、まさにその表れです。こうした先進的な取り組みが、私たちにとっても非常に心強く、ありがたいと感じています。
髙倉 将平
TikTok for Business Japan, Global Business Solutions, Growth Agency Group, Senior Manager
🔵髙倉:TikTok Shopが日本市場でもローンチしましたが、どのような体制で活用を支援されますか。
🔴岩佐:studio15では、「TSP(TikTok Shop Partner:代理店・EC運営サービス)」、「TAP(TikTok Affiliate Partner:アフィリエイトマッチングサービス)」、「CAP(Creator Agency Partner:MCNサービス) 」のすべての認定を取得済みです。これにより、クライアントサポート、アフィリエイトマッチング、クリエイターサポートといった全方位的なTikTok Shop活用支援を実現します。
TikTok Shopのアカウント運用では、クライアント様目線ではどうコンテンツ(クリエイター動画や企業アカウントの動画等)を調達するかがポイントになると考えています。コンテンツが確保できないと、クライアントのショップページに誘導するトラフィックが十分に生めないためです。
一方、クリエイター目線では、商品が大量にある中でどう自分に合った商品とマッチングするかや、売り方のノウハウの獲得が重要になります。この大前提がある中で、弊社はTikTok Shop活用支援を行っていきます。
TSPとしては、セラーの施策設計やEC運営の支援に加え、重要となるマーケティング戦略やコンテンツ戦略の設計から、TikTok Shopセラーセンターの開設・運用、アカウント運用代行まで一貫してサポートします。
TAPとしては、クライアントの商品とクリエイターのマッチングを促進します。自社のクリエイターに限らず、幅広いクリエイターと連携し、これまでTikTok上で数多く実施してきたキャスティングやアフィリエイト施策の強みを活かして取り組んでいきます。
CAPとしては、クリエイターのリクルーティングや育成を通じて“売れるクリエイター”の輩出に力を入れます。これまでのMCN事業で培ったノウハウを活かしてクリエイターを育成し、クライアントに対しても売上貢献できるクリエイターをアサインできる体制を強化していきます。クリエイターによるLIVE配信でのTikTok Shop活用支援も行っていく予定ですが、配信を活用したEコマースに慣れていないクリエイターは多いため、LIVE配信での売り方の育成等も行い、LIVEクリエイターの輩出もしていく予定です。
🔵髙倉:TikTok Shop活用において、studio15の強みである「運営アセット(クリエイターリード、公式アカウント運用、クリエイティブ制作)」がどのように活かされるとお考えですか。
🔴岩佐:TikTok Shopの活用においては、質だけでなくコンテンツの幅と量の重要性がこれまで以上に高まると考えています。
大量の商品群の中からクリエイターに「どの商品を選んで発信してもらうか」を設計することは、意外に重要なポイントであり、ただセラーとして出店するだけではクリエイターによる商品・サービスの紹介投稿がスムーズに促進されません。その中では、TAPやCAPが介在することによって、クリエイターの投稿を促していくことが重要になるので、MCN事業の経験が活きてくると思います。
さらに、TikTok Shopの活用では、クリエイターの育成力がこれまで以上に重要になると考えており、その点でTikTokクリエイタースクール事業の存在が大きな強みになると捉えています。
🔵髙倉:確かに、これからは求められるものが大きく変わってくると思います。
これまでは「バズらせること」や「動画の再生数を伸ばすこと」を目的にコンテンツが作られてきた側面がありましたが、TikTok Shopの活用ではそれに加えて「モノを売る」という視点がより重要になると考えます。
そのためには、単に話題になる動画を作るだけでなく、「どうすれば商品が売れる動画になるのか」という新たなチャレンジが求められます。クリエイターにとっても、より売上に貢献できる力を身につける必要があり、そのための育成がこれまで以上に重要になってくると感じています。
🔵髙倉:TikTok Shopを活用し、広告代理店として新たなビジネスの“勝ちパターン”を作るために重要だと考えているポイントは何ですか。
🔴岩佐:TikTok Shopの登場によって、新たな戦い方が必要になってくると想定しています。その中で、ブランドの勝ちパターンを作る上で、これまで以上にオーガニックコンテンツの質と量の確保が重要になると考えています。
なぜなら、これまでTikTokを活用してこなかった企業の参入が増えると予想され、その中で多くのブランドに埋もれず、認知や存在感を示していくには、質の高いコンテンツを一定量確保し、継続的に発信していく必要があるからです。実際に米国のTikTok Shopの活用支援で成功した企業では月に1,000件のクリエイター投稿を行っており、将来的には、日本でも月に数百件以上の投稿数の確保が必要になっていくと考えられます。
その中で、購買につながる表現力や届け方に長けたクリエイターによる質の担保と、ブランドの露出を広げるためのコンテンツ量の担保、その両方が相互に作用し、勝ちパターンを形成していくと考えています。
🔵髙倉:TikTok Shop向けのサービスを提供する立場として、TikTok Shopは今後のクライアントのビジネス成長にどのような役割を果たすとお考えですか。
🔴岩佐:我々としては、TikTok Shopは、いわゆる右脳的な直感やパルス型の購買行動を一層促進する存在になると考えています。これまで外部遷移やオフラインでの購買が必要であった中でも“TikTok売れ”と呼ばれる現象は多く発生してきましたが、TikTok Shopの活用によって購買動線がプラットフォーム内で完結することで、その動きがさらに加速すると感じています。
大きな理由として、TikTokの強みである圧倒的なレコメンドシステムがあります。この仕組みは、ユーザーが能動的に探さなくても、次々と魅力的なコンテンツに出会える点が特長です。そのコンテンツ体験に購買動線が組み合わさることで、「ディスカバリーEコマース」の呼び名の通り、「発見」から「購入」まで直接的に繋げることができます。それにより、AIDMA的な順を追った購買プロセスを飛び越える存在、消費者の買い物体験を変化させるようなEコマースになるのではと思っています。
また、海外では、TikTok Shopの活用を起点に急成長した新興ブランドも多数登場しています。日本でも、特に新興ブランドや一般的に知名度があまり高くないブランド、またはブランドを復活させたいクライアントにとって、TikTok Shopの活用は大きなチャンスになるはずです。
🔵髙倉:TikTok Shop活用の普及やマーケットの成長という観点で取り組んでいること、もしくは今後取り組んでいきたいことがあればお聞かせください。
🔴岩佐:私たちのような代理店はTikTok Shopの可能性や仕組みを十分に把握していますが、企業やクリエイターの中にはまだ十分に理解されていない方も少なくないと考えています。
今はまず、TikTok Shopの企業活用の方法や、TikTok Shop活用が生むインパクトや可能性といった基礎的な部分をしっかりと伝えるフェーズだと捉えており、そのために、セミナーや勉強会を通じて情報提供を行っています。
今後は、より具体的で実践的な戦い方や、ビジネスの変革につながる話も伝えていきたいと考えています。
私個人としては、TikTok Shopは単なる新しいチャネルではなく、企業やクリエイターにとって戦い方そのものを変えるゲームチェンジャーになると確信しています。その可能性を広く伝え、新たなビジネスチャンスの創出に貢献していきたいと思います。
企業・代理店向けに、セミナー情報の発信や個別勉強会を積極的に行っていますので、ご興味のある方は、是非お気軽にお問い合わせください。
クライアント向け勉強会の様子
🔵髙倉:studio15さんとはこれまで3〜4回ほど、イベントやセミナーをご一緒させていただいており、常に動きが早く、マーケットの啓発にもいち早くご協力いただいています。その姿勢には大変助けられています。おそらくTikTok Shopの活用においても、先行して導入する企業をいち早く獲得し、しっかりと売上を伸ばしていただけるのではないかと期待しています。
そこで、今後TikTok for Businessとの連携において、どのようなことを期待されているのか、また、求める具体的なサポートや共創していきたい新しい価値・マーケットがあれば、ぜひお聞かせください。
🔴岩佐:TikTok Shopの活用においては、オーガニックコンテンツだけでも大きなポテンシャルがあると考えているため、商品やサービスに強みがありながら、なかなか広く伝わりきっていないブランドを支援し、TikTok Shopの活用によって集客や売上につながった、新たな成功事例を数多く生み出していくことを、TikTok for Businessさんと共に実現していきたいと考えています。
🔵髙倉:studio15さんは、クリエイターとの連携やコンテンツ制作に強みを持ち、TikTokへの理解度が非常に高い代理店の一つだと感じています。
TikTok for Businessとしても、今後TikTok Shopに関連するさまざまなソリューションや広告プロダクトをリリースしていく予定ですが、そうした新しい取り組みをいち早く取り入れ、クライアントのために先行事例を作り、マーケットを牽引していただけることを期待しています。TikTok Shop活用の分野で、マーケットをリードするパイオニアとして、これからも大きな役割を果たしていただければと思っています。